消費者還元事業と統一QR「JPQR」の申請手続きに挫折する訳

経済産業省の消費者還元事業と総務省のモデル事業「統一QRコード「JPQR」」の申請手続きを行って、この度、めでたくとりあえず利用できるようになったので、ここで一度、課題や対策についてここにまとめてみることにしました。
 
尚、増税反対やポイント還元反対について触れるものではありません。決まったことに対して、どう活かすと事業者にとってHappyなのかを考える中で、自ら実践して感じたことをまとめたものです。

  

経済産業省の消費者還元事業とは

消費税が8%から10%に増税されることに伴う消費の冷え込みを抑制するために、消費者が買い物をする際にキャッシュレス決済を行った場合に限り、最大5%のポイント還元を行うと言うもの。また、中小企業に於いては、キャッシュレス決済導入に掛かる端末導入費用の全額負担および、決済手数料の一部を国が負担すると言うもの。
詳細は、キャッシュレスポイント還元事業専用ページでご確認下さい。

  

総務省のモデル事業「統一QR「JPQR」」とは

決済事業者の乱立により、各社異なるアプリを立ち上げて操作を行うと言う状況は、消費者も店舗側も煩雑となるため、統一のQRコードを発行し参加決済事業者であれば、どのアプリからでも決済が実行できると言うもので、事業者側は消費者還元事業の登録も行えば、統一QRコードを利用した方が決済手数料が安くなると言うメリットがある。
福岡県、和歌山県、長野県、岩手県の4県で2019年8月1日から2020年1月31日までのモデル事業として実施されています。

  

事業登録の一連の経緯

昨年から福岡市の実証事業の一つとして行われている、キャッシュレスFUKUOKAが開催された6月7日。福岡市はG20財務省会談の前夜祭で緊張感の中、街はそわそわしていた感じだったのが印象的でしたが、当イベントに市長が登壇しなかったせいか、はたまた2年目と言うことからか、前年の同イベントのような盛り上がりには欠けていたと、顔見知りの決済事業者の方々と話したものでした。

さて、このイベントでは統一QRコードの紹介をするブースが会場の隅に設置されていて、県内各所で説明会が複数回に渡って開催されることを知りました。ただ、キャッシュレスについてあまり詳しいと言う印象ではなかったのは、消費者還元事業のコースセンターと同様でした。

6月21日(金):セミナー参加
福岡県では6月21日からスタートした統一QRコード「JPQR」の説明会。関係各所の方々が大勢いるだけでなく、地元TV局も取材に来る注目ぶり。会場は200人以上はいたような… ひと通りの説明を聞いて驚いたのは、なんと申請手続きが10枚近くもある書類を全て手書きでと言うこと。

キャッシュレス、特にスマホ決済の導入はネット完結が一般的ですが、それではネットに苦手意識のある経営者の方々にはハードルが高いことから、手書きでの手続きとなったそうです。が、全ての事業者を手書きにする必要があったとは1mmも思えないので、全国で実施するとなった暁にはオンライン手続きが導入されることを願わずにはいられません。

6月24日(月):商工会議所へ書類提出
記入方法に癖があり書き損じばかりで提出したのは、週明け6月24日に商工会議所へ。そこでは手続き完了までに1ヶ月くらいかかるケースもあるとの説明を受けたものの、8月1日からスタートする制度なので7月下旬には完了するものと思っていたのは、おそらく事務局の方も同じだったのでしょう。

6月25日(火):PayPayから還元事業受付け開始の案内メール
PayPayから消費者還元事業の受付け開始の案内メールが届いた時には、すでに統一QRコードで同時に申請済みの私としては、その後、何度となく届く案内はスルーすることになるのです。
因みに、この頃から、導入している決済事業者に直接、手続きがどうなっているのか問い合わせをしていました。と言うのも、私が登録している他の決済事業者からは何のアナウンスも届いてなかったんです。

7月29日(月):商工会議所へ問い合わせ
申請からすでにひと月が過ぎているにも関わらず何の音沙汰もないため、商工会議所へ問い合わせをしたところ、すでに発送しているとの連絡を受けワクワクしながら今か今かと待っても何も届かない。再度、31日に問い合わせたらまだ審査が終わっていないとのこと。モデル事業とはいえ、こんなにもいい加減なものなのかと不信感は募るばかりでした。

仮に審査に時間が掛かる理由があるとすれば、来店型の店舗を構えていないと言うことが、もしかすると想定外だったのかもしれません。それだけでなく、よくよく思い返してみると、説明会ではモデル事業と消費者還元事業の制度の説明、各決済事業者の説明で終わっていて、登録後の流れや具体的な利用方法についての説明はありませんでした。限られた時間の中でそこまで話すことができなかったんだと思いますし、手続きをする前から色々説明しても混乱するだけと判断されたのかもしれませんが、説明会の時間を長くとってやるべきだったと感じます。

9月初旬:登録完了
手続き完了のメール、ステッカーなどが届いたのは、すでに忘れかけた9月初め。ですが、この間、参加事業者が増えたと言う話しがネットメディアで流れていたり、Twitter上でシェアされていたり、申請中の私たちにはその様なアナウンスは一切ないままで、もう、何が正しい情報か分からない状況が続いていたわけです。

次々に届く案内に合わせて設定などの作業を行うも、エラーになるJPQR。これまでセミナーで紹介してきたけれど、これはとてもじゃないけれど使えない、紹介できるレベルにないと判断しました。
 
あれだけ多くセミナーが開催され、非常に多くの方がセミナーに参加していたにもかかわらず、サービス開始から1ヶ月以上が経過しても街中で統一コードのステッカーは一度も見ていないのは、ある意味、当然のことでしょう。

  

統一QRコード申請と消費者還元事業の申請へ

さて、統一QRコードの申請と同時に消費者還元事業の申請も可能との説明をきき、一括で申請ができるものと思って一括申請を選んだのは、6月24日。その判断については、今でも悔やまれてなりません。

統一QRコードの申請の際、参加決済事業者の中ですでに加盟店登録が完了し利用している決済事業者の有無を問う項目がありませんでした。ここで疑問に思ったんです。「きっと名寄せすることになるだろうから、初めから申告してもらった方が効率が良いのではないか」と。とは言え指示通りにしておけば間違いないんだろうと言われるままに手続きを進めました。この時、私がイメージしていたのは、下図の上段、しかし実際には下段の流れだったのです。

上段の登録フローを想定していたが、実際は下段のフローで、各事業者には自分で申請するらしい

9月初旬に決済事業者の1つから統一QRの手続き完了メールが届き、これから消費者還元事業の手続きに入る旨の案内があったのですが、あろうことかポイント還元のスタートとなる10月1日に間に合わないとの連絡が届く始末。すでに登録完了している決済事業者があったにも関わらず、JPQRと同時に申請をしたことで10月1日のスタートを切れないとは、言葉がありませんでした。

日頃からPCもスマホも人一倍使っている私でも、各方面に何度となく問い合わせ、確認しながら進めてもなお振り回されている様な状況を思えば、ITの苦手な方々が一連の手続きに挫折しても仕方ないよね、そう思わずにはいられません。

  

8月1日が過ぎ、10月1日も過ぎ…

事務局側がどのような業務フローで動いていたのか分かりませんが、モデル事業とはいえ、漏れなくダブりなく進める方法があったのではないかと思われて仕方ない思いを抱えていたところに、10月中旬、「どうしてあちこちで問題が発生しているのか?」地元の某TV局から取材依頼が入りました。放送はされなかったものの、取材クルーへお伝えしたのは、どちらも決定から施行までの期間が短すぎたのではないか、と言うこと。

通常、システム改修も必要となる制度を全国的に導入する上でどのくらいの期間が必要なのかわからないものの、11月に入った今でも、決済事業者の受付けが始まっていないところもあるのが現状。

厳格なセキュリティ求められるだけに、突貫工事で対応したところでセブンペイの様なお粗末な事態を目の当たりにして、あえて慎重にしているのかもしれませんが...

8月1日のJPQRのスタートも間に合わず、10月1日のポイント還元にも間にあわず、如何なものかと思うわけです。

  

ポイント還元、早めに終焉と思いきや...

あちこちで登録ミスが発生していたり、まだ手続きが完了していない事業者もある状況で、すでに多くのポイントが還元されていると言う情報が発表され、このペースで行くと6月まで予算が持たないとの報道が出ていました。

記事はこちら
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51417930V21C19A0EA4000/

どうやら政府としては補正予算を組み、次年度も一定の予算を確保すると言う流れで話しは進んでいる模様です。確かに、1日10億円弱のポイント還元がされていては、予算は1700億円ということを考えると年明け早々に予算が尽きてしまいかねません。と言うわけで、かなりまとまった補正予算が組まれることになりそうです。

  

最後に

キャッシュレスは普及のスピードこそ読みきれない部分はありますが、世の中はその流れになっていて避けて通ることはできません。

来年にはマイナポイントやペイロールの導入も想定されていることを考えると、決済事業者と関連省庁との業務フローが漏れなくスピーディになることを切に願いつつ、事業者自身については変化を受け入れ一つ一つ対応していくしかない時代なんだと考えます。

因みに、弊社ではキャッシュレスセミナーはもちろん、導入支援も行っておりますので、お気軽にご相談下さい。